大人の総合学習「予算編成のしくみ」◆予算 budget日本国憲法86条では、予算について「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない」と規定しています。国の予算は、憲法の上では内閣が作り国会に提出することになっていますが、実際に具体的な作業を行って、取りまとめをしているのは中央省庁のひとつである財務省です。 ◆財務省 the Ministry of Finance2001年に大蔵省を改組して発足した財務省は、国の予算編成のために必要な具体的な作業をしている中央省庁です。予算の編成過程では、首相や財務省の諮問機関などから、意見を取り入れますが、諮問機関には、予算編成や財政運営の権限を財務省から首相官邸に移す目的で2001年1月に設置された経済財政諮問会議などがあります。これらの諮問機関は毎年5月から6月にかけて提言をまとめます。これらをもとに与党の意見も取り入れた上で、財務省が「一般歳出」(政策にかかる費用や医療費、年金など社会保障費の合計で、予算編成上、最も重要な部分)について「概算要求基準」(シーリング)をまとめます。 ◆概算要求国の予算の編成に先立って政府各省庁は、財務省によるシーリングをもとに、例年8月末日までに次年度の予算要求を大蔵省に提出します。これが「概算要求」です。 ◆概算要求基準予算編成にあたって、各省庁がそれぞれ安易な要求をしてしまうと予算全体が膨張しかねません。そこで財務省が要求の上限を設定するものが「概算要求基準」です。「天井」を意味する英語は「シーリング」(ceiling)ですが、「概算要求基準」は「シーリング」と通称されます。 ◆財務省原案例年、財務省は各省庁の「概算要求」について詳しい説明を聞いたり、資料の提出を求め、個々の経費を査定します。2006年度予算も2005年8月31日に締め切られましたが、概算要求による国の一般会計の総額は85兆3000億円程度になるため、財務省は年末までの査定で前年2005年度予算(82兆1800億円)以下に抑える作業を進めます。不必要と判断した額を削り、財務省原案として12月下旬に内閣に提出するわけです。 ◆復活折衝 negotiations for restoring budget requests「概算要求基準」に沿って提出された各省庁の「概算要求」が、財務省の査定を受け「財務省原案」となりますが、査定というくらいですから「要求」は削減されることになります。削減しないと財務省は仕事の怠慢だと陰口をたたかれたりもします。一方、だからといって各省庁も「はいそうですか」と引っ込むわけには行きません。削減されてかまわないのなら最初からそんな要求を出すなとまで言われるかもしれません。ですから、各省庁としては、削減された分を少しでも認めてもらおうと掛け合いをします。これが復活折衝です。 ◆政府予算案財務省原案に対して、各省庁が復活折衝を行った結果まとまったものが政府予算案ということになります。この最終的な政府案、手続きとしては閣議決定を経て、翌年1月に開会される通常国会に提出されることになります。 ◆一般会計予算 a general account budget国の予算には、一般歳出以外にも「国債費」「地方交付税」などがあることも忘れてはいけません。国債の元本支払いや利払いに充てるのが「国債費」、国税の一定割合を地方に再配分するのが「地方交付税」。これらを全部合わせて「一般会計予算」と呼びます。たとえば、05年度は82兆1829億円。その半分強の47兆2829億円が一般歳出、国債費も18兆4422億円に達しています。国債費は過去の借金への費用です。 ◆国債費 expenditure for national debt service国債は家計でいえばローン。つまり国債残高は過去に借りた借金の未返済分です。国債費は、新たに何かを生むものではありませんが、毎年赤字を減らさないと、国債費は膨らむ一方です。国債の利子の支払に必要なのが利払費ですが、金利が上昇していけば、その利払費も増加していくことになります。 ◆増税なき財政再建「財政再建」が声高に叫ばれるようになって、かれこれ20年以上になります。赤字国債依存からの脱却が政治課題ということになり、臨時行政調査会の答申を受けて、行革関連特別法案が成立したのが1983年。財政再建のためには、単純に考えると歳出削減や増税が必要になりますが、増税をすると国民の反発を買い、選挙の結果に響きます。このころから「増税なき財政再建」というスローガンが連呼されるようになりました。 ◆2006年度予算「増税なき財政再建」というだけあって、政府は「財政再建」に歳出削減で対応しようとしています。それでも何を削るかとなるとさまざまな抵抗があり、大ナタを振るえないのが現状です。2006年度用のシーリングは5年連続の歳出抑制型でした。政府開発援助(ODA)など政策判断で増減できる「裁量的経費」と、公共事業が中心の「公共投資関係費」を2005年度予算比で3%減らすことにしています。年金や医療費などの「社会保障関係費」は、20兆1000億円で一般歳出の中で最大ですが、高齢化にともなって増え続けています。06年度は前年度より8000億円増える見通しでしたが、それを5800億円増まで抑えています。 |
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