月刊基礎知識
月刊基礎知識トップページへ バックナンバーへ
“春闘のない”春に読む、働く者の権利についての用語集
 

闘争の戦術

一斉休暇闘争/一斉休暇戦術

本誌1980年版収録。以下、

法律で争議行為を禁じられている官公労働者が、自己の年次有給休暇を、時期を走めて一斉にとることによりストライキと同じ効果を挙げようとする闘争形態。一種の遵法闘争。年次休暇の行使は労基法上当然の権利だとして正当視する見解、逆に年次休暇と争議行為とは相容れない制度とする否定見解など論議が多いが、最高裁判決(全林野白石営林署事件、昭48年3月2日〉は、労働者の所属する事業場での一斉休暇闘争は実質的な同盟罷業であって、本来の年休権の行使ではない、としている。

ページの先頭へ 戻る

職場闘争(1972)

本誌1972年版収録。以下、

workshop struggle 組合員の一人一人が生産の場である職場で、日常の具体的要求について闘争を展開し、この職場での要求や闘争を基礎として組合全体の闘争を盛りあげ、また組合全体の闘争を各職場、各組合員に浸透させる活動をいう。二・一ストの禁止後、産別系組合でこの闘争方式が一時実行されたことがあったが、朝鮮戦争以降、一時沈滞した。昭和27〜28年から組合活動を刷新強化するために、再び職場闘争の重要性が強調され、労働運動高揚の基礎的な力となった。その後、職場闘争の偏重と行き過ぎもみられ、35年の三池闘争以後は、その再検討が行われた。

ページの先頭へ 戻る

職場闘争(1980)

本誌1980年版収録。以下、

組合員大衆の職場における闘争というように広い意味に用いる場合と、組合運動が幹部闘争に終らないために特に職場の労働条件や苦情・不満をとりあげて(点検闘争とよぶ)職場の責任者(たとえば職制)を相手に要求や交渉(戦場交渉という)を行う闘争形態をいう場合とがある。企業単位の組合の場合、特定職場部門だけの交渉が団体交渉としての保護を受けるかどうか、また場合により職場単位の争議行為が争議権の行使と認められるかどうかは単組と職場組織との権限・統制にかかわる法律問題である。

ページの先頭へ 戻る

リボン闘争(装着闘争)

本誌1980年版収録。以下、

労使紛争(労働争議)に際して、組合員がリボン、腕章、ハチマキ、ゼッケン等を付け、これに「闘争」とか要求事項を書いて示威する闘争のこと。組合が争議行為として指令して行わせる場合もあるが、多くは争議行為に入る前の段階で日常闘争の形態で行われる。日常勤務の服装と違うところから使用者側がその取外しを命じ、組合員がこれに従わないとしばしば法律上の紛争となる。判例は、リボンなどの装着だけでは業務の運営が直接に阻害されることはないから日常の組合活動として許されるという見解と使用者の施設と勤務時間を利用した組合活動として許されないとする見解とに分かれる。

ページの先頭へ 戻る

ビラはり闘争

本誌1980年版収録。以下、

会社の門、へい、工場・事務所の窓、扉、廊下、机、ロッカーあるいは車両等に組合の要求事項等を書いたビラを多数貼りつける闘争手段。ビラまきと違って貼布それ自体にデモンストレーションとしての効果をもたせている。労働争議において多くの組合が用いるところである。使用者の施設管理権との関係でしばしば問題を生じている。

ページの先頭へ 戻る

同情スト

本誌1980年版収録。以下、

synpathetic strike 労働者が自分たちの使用者との間には具体的紛争がないのに、他の事業所あるいは産業の労働争議を支援してストライキを行うこと。使用者としては対応することのできない要求であるところから政治ストと同様、目的上正当性を欠くとする議論がある。ただし実定法上は特別の定めはない。

ページの先頭へ 戻る

ゼネスト

本誌1980年版収録。以下、

general strike ゼネラル・ストライキの略称。一産業、あるいは全産業の労働者が全国的規模で行うストライキ。政府の労働政策反対など政治的自的をもつ場合が多く、その影響は大きい。外国では、1926年のイギリス、1977年のフランスのゼネストが有名である。わが国では昭和22(1947)年2月1日、全官公労働者が中心となって、ほとんどすべての労働者をまきこむゼネストが計画されたことがある。この二・一ストは占領軍の命令で禁止され実現しなかった。

ページの先頭へ 戻る

政治スト

本誌1980年版収録。以下、

political strike 政治的目的ないし要求をかかげて行うストライキ。政治的デモンストレーションとしてなされることが多い。経済ストに対応する言葉であるが、純粋に政府の政策に反対することだけを目的とするものは別として、経済的要求とあわせて政府に一定の労働政策を要求する場合には、経済ストとの区分が明確でない。しかし、直接、使用者に対して要求を貫徹することを目的としない点で正当な争議行為にあたらないとする議論も強い。実定法上特別の定めはなく、正当性の判断は裁判所に任されている。

ページの先頭へ 戻る

バリケード・スト

本誌1977年版収録。以下、

barricade strike 略してバリストともいう。反戦系運動(政治闘争)を、そのまま労働組合のストライキに適用したもの。すなわち街頭でバリケードを築いて解放地区を築くように、ストライキ職場なり、ストライキ工場にバリケードを築いて、その職場なりの工場を占拠して、圧力をかけるもの。

ページの先頭へ 戻る

座り込み

本誌1980年版収録。以下、

sit-down 職場放棄型に対応する職場占拠型の争議行為。通常、座り込みストの形をとるが、団体交渉中に、使用者側に圧力をかける目的で廊下などに座り込む示威運動にとどまる場合もある。座り込みストの場合には、スト破りや業務運営(例えば出荷など)の阻止をはかるためのピケッティングの役割を果たすことが多い。座り込みそれ自体は正当な争議行為とされる。

ページの先頭へ 戻る

怠業(サボタージュ)

本誌1980年版収録。以下、

sabotage 組合が行う争議行為の一種。ストライキと異なり、労務の提供を続けながら、作業・執務能率を下げることにより業務阻害の効果をあげながら、同時に所定時間労働をしていることで賃金カットを免れるという戦術である。特に不良品を作るとか、施設に損傷を与えるなど不当性のない限り原則的には正当な争議行為とされるが、使用者はロックアウトにより就労を拒否することができる。

ページの先頭へ 戻る

ピケッティング

本誌1980年版収録。以下、

picketing 通常、ストライキに付随する行為として組合員がスト中の工場、事業所等の出入口に立ち並び(ピケットまたはピケを張るという)、スクラム(腕組み)を組んだり、バリケードを立てたりして、脱落組合員や非組合員あるいは第三者の立入りを阻止し、または入ることによってストライキを妨害しないように呼びかけること。紛争中の土地の測量阻止などにもピケという言葉が使われるが、争議行為としてのピケッティングは、争議権の保障の視点から特別の法的効果が与えられる。ただし、その効力や限度について定めた実定法規はないから、その判断は裁判所に任され、おおむね平和的説得(物理的なカの行使をしないこと)の範囲内で、争議の具体的状況に照らし、正当性の判断が行われている。

ページの先頭へ 戻る

生産管理(業務管理)闘争

本誌1980年版収録。以下、

労働組合が争議戦術の一つとして、工場や設備、資材をその管理下に置き、使用者の指揮命令を排除して自ら業務運営を行うこと。第2次大戦直後のわが国でかなり広く行われ、善良な管理者の意図で基本的な企業体制を崩さず行われる限り争議行為として正当性を失わないとする下級審の判決も出たが、最高裁は使用者の所有権侵害になる、として違法と判断した(昭25年11月15日)。その後、タクシー労組のストなどで、水揚げ料金の組合による一時保管戦術(納金ストと呼ばれる)や、エンジンキー、車検の組合保管戦術などで、部分的に行われているが、判例上は必ずしも違法とされていない。外国でもフランス、イタリアなどでみられる労働者自主管理闘争はこの生産管理闘争に属する。

ページの先頭へ 戻る

闘争電車

本誌1976年版収録。以下、

交通ゼネストのたびに国電をはじめ列車の車体にペンキで「国民春闘勝利」「権力の手先××派の殺人を許すな」などと書かれる。この檄(げき)が一般乗客に効果を与えているかどうかは別として、これを“闘争電車”とマスコミは呼びはじめた。

ページの先頭へ 戻る

バンキングスト

本誌1973年版収録。以下、

banking strike 製鉄関係の労働者がストライキの手段として熔鉱炉の火を消すことである。昭和47(1972)年春闘で鉄鋼労連が46回臨時大会で、従来使用者側の一発回答できめられたことをはね返すためにパンキングストを決定した。鉄鋼業内不況のため減産体制をとっており、使用者が強硬な態度に出ることを予想してこの手段を採択した。

ページの先頭へ 戻る

一株争議

本誌1972年版収録。以下、

公害闘争などで一口株主となり、株主総会において会社に攻撃をかけようとする闘争方法が最近多くなっている。一株争議もその形態の一つであり、労働争議に援用されたものである。新小岩ボーリングセンターの労働組合は、70年10月副支配人の不当労働行為などで会社側と対立し、会社側は12月25日ロックアウトし、組合幹部4人を解雇した。団体交渉を重ねたが解決がつかないので、同ボーリングセンターに出資している末永久仁のフランスベッドと交渉しなければならないとして、71年1月末からフランスベッドの株2500株を手に入れ、5月31日に予定されているフランスベッドの株主総会に支援労組員など約500人を動員する準備をすすめてきた。4月28日フランスベッド社長立合の下に団体交渉が開かれ、一株運動をやめることを条件に、組合側の要求が全部認められた。

ページの先頭へ 戻る

地域ぐるみ闘争

本誌1972年版収録。以下、

struggle by all regional labor わが国には会社町が多いことに照らし合わせ、単に組合員の家族のみならず、会社町のすべての組織・未組織労働者、さらに中小商工業者などを結集して組織的な闘争をすすめ、企業別組合の弱点を克服しようとする闘争のしかた。昭和27(1952)年以降の基地反対闘争(農民を含めて地域ぐるみ)や企業整備反対闘争(町ぐるみ・家族ぐるみ)で採用された。

ページの先頭へ 戻る

家族ぐるみ闘争

本誌1972年版収録。以下、

家族や主婦をも組合活動に巻き込み、闘争の際に、組合員の脱落を防ぎ、闘争の持続発展を図るため、恒常的な組織として家族組合を組織し、組合と一体となって行う闘争のしかたである。昭和27(1952)年秋の炭労スト以来行われた。

ページの先頭へ 戻る

人権争議

本誌1972年版収録。以下、

struggle for civil liberty 憲法に保障された基本的人権そのものが侵されている場合、これを取戻すための諸要求を主たる内容とする争議を人権争議とよんでいる。昭和29(1954)年の近江絹糸の争議に対して用いられた。

ページの先頭へ 戻る

ハンスト

本誌1965年版収録。以下、

hunger strike ハンガー・ストライキの略。絶食を主要内容とする一種のすわり込み戦術。もっとも人目につきやすい場所や街頭で行われる。団体交渉を促進したり、労働者の大衆行動を激励するための、特別な場合における、やむをえない補助的な闘争手段である。

ページの先頭へ 戻る

柔軟スト

本誌1965年版収録。以下、

資本攻勢の出方と組合側の主体的条件に即応して、全面スト、部分スト、指名スト、運搬ストなど、時間的にも、職場、参加人員についても変化のある各種の争議行為を織り混ぜ、もっとも犠牲を少なくして、もっとも効果のあがる戦術をつぎつぎと展開していくストライキのやり方を、従来の全面スト一本やりの方式と対比し柔軟ストとよんでいる。

ページの先頭へ 戻る

ボイコット

本誌1951年版収録。以下、

Boycott 組合の闘争戦術で罷業、怠業と共に有力なる闘争手段の一はボイコットである。これは闘争時に雇主の製品の不売買を第三者に勧誘し、以て打撃を与えるのが最も普通に行われるものであるが、また特定の使用者、監督者を忌避する場合もある。ボイコットが成功する為には自己の組合のみならず友誼団体、一般市民の支持を必要とし、アメリカの如く組織と宣伝に富む所では相当効果的であるが、日本では、まだ殆んどこの戦術は採用されてない。

ページの先頭へ 戻る

非公認スト/山猫スト

本誌1984年版より。以下、

unofficial strike/wildcat strike 組合がストライキを行う時はその内部手続きに従って組合大会の決議を経、組合全体の組織的行為として行うのが普通である。このような組合の正式の承認なしに、一部の組合員が行うストライキを非公認ストと呼ぷ。非公認ストには、組合の支部が本部の公認なしに支部単位に行う場合と、一部の組合員が本部はもちろん、支部の意志に反してゲリラ的、無統制的にストをする場合とがある。前者の場合、組合による追認などにより、なお、正当性が認められる余地があるが、後者は手のつけられない暴れ者という意味でワイルドキャット・ストライキ(訳して山猫ストという)と呼ばれ組織的行為としての正当な争議行為として扱われない。

ページの先頭へ 戻る

点検闘争

本誌1972年版収録。以下、

労働組合が職場内における労働基準法に造反する事項(超過労働や不当酷使)や、職制のピンはねや、資材横流しなどの経理内容の不正を明らかにする闘いをいう。全国逓信労働組合(全逓)が昭和30(1955)年7月から、特定郵使局における点検闘争を行ってから、このことばが用いられるようになった。

ページの先頭へ 戻る

順法闘争

本誌1964年版収録。以下、

法律や規則を文字どおり完全に励行することによって、使用者に損害を与える争議戦術。通常、法律や規則は完全に励行されていない実情にあるので、この争議手段に訴えると、仕事の量や質についてサボタージュまたはストライキと同じ効果をもたらすことができる。争議権が制限されている組合や、ストライキを行うことが不利な結果をもたらす場合(たとえば交通運輸業)、この争議手段がしばしば採用される。「安全運転」「安全通信」「休暇戦術」「定時退庁」などはこれに属し、交通関係では、交通機関運行の安全を保持するための各種の規定や規則を完全に守ることによって実際の運行を遅延または休止する結果となるので、この分野でもっともしばしば順法闘争が行なわれる。

ページの先頭へ 戻る

到達闘争

本誌1964年版収録。以下、

賃金や臨給などをめぐる労働組合の争議において、ある一つの組合(企業別組合)の獲得した妥結額に到達し、さらに上回ろうとして、他の同じ産業の組合が、きそって激しいストライキをくりかえすという組合闘争の様式をいう。摩擦も多く、犠牲も出るので、私鉄関係ではこの闘争様式を反省するとともに、あらゆる労働条件を産業別の立場で決めてゆくという、近代的な労使関係の樹立をめざして、昭和35(1960)年から大手組合のほか、中小組合をも結集して、総連本郡による中央統一交渉方式を打ち出しているが、足並みは必ずしもそろっていない。

ページの先頭へ 戻る

共闘(共同闘争委員会、共同闘争会議)

本誌1965年版収録。以下、

共通ないし近似した要求や闘争の時期ないし地域の共通性を土台として、組合が結実して闘争力を強化するために設けられる臨時的組織。共闘の機能は、情報交換、連絡、援助から共同交渉に至るまで各種の段階があるが、企業別組合の交渉力・闘争力を補強する上で、ある程度の役割を果たしている。

ページの先頭へ 戻る

職場防衛運動

本誌1954年版収録。以下、

昭和26(1951)年2月、日経連が企業を共産党の破壊活動から守るために労資協力によって職場防衛の態勢を作らなければならないと呼びかけたが、この構想にもとづいて総同盟系組合や三田村四郎、鍋山貞親氏らが中心の職場防衛運動連絡協議会(27年7月)が関係する職場に展開されている運動であって、その組織としてはっきり職場防衛隊を作っているところや、防火隊その他の組織がその役割をつとめているところもある。この運動に対して組織は、これを職場の破防法であるとして、組合活動や争議行為をおさえ組合を御用化し、産報化しようとするものと反対している。

ページの先頭へ 戻る

御用組合(ごようくみあい)

本誌1991年版収録。以下、

company dominated union 使用者に対して自主性をもたず、そのいいなりになる労働組合。「御用をうけたまわる」組合という軽蔑的意味。組合に使用者の利益代表者が加入したり、会社から組合運営費の援助を受けたりする組合は、自主性を失う危険性が大きいので、労組法(2条)は、このような組合を労働組合として扱わないことにしている。

ページの先頭へ 戻る
All Right Reserved, Copyright(C) ENCYCLOPEDIA OF CONTEMPORARY WORDS